私たちが住む天の川銀河もそうですが、ほとんどの銀河の中心には大きなブラックホールがあります。銀河のあちこちに小さなブラックホールがありますが、中心にあるものは「超巨大(ちょうきょだい)ブラックホール」とよばれ、知られる中で最も大きく重い種類のブラックホールです。そんなにたくさんあり、そんなに重いブラックホールが、どこから来たのか、どのようにできたのか、わかっていません。研究チームは、ブラックホールになる星が生まれる雲の新しい成分を考えることで、巨大ブラックホールができる新しいシナリオを提案しました。
とてつもなく大きく重い星
天文学者の多くは、大昔にガスとチリの雲から生まれたとてつもなく重い星から、巨大なブラックホールができたと考えています。この星が一生を終えると、巨大ブラックホールになるのです。そして、巨大ブラックホール同士が合体すると超巨大ブラックホールができるのです。
しかし、このシナリオには問題があります。雲の成分が水素とヘリウムだけのものにしかあてはまらないのです。宇宙が始まって間もなく、このような雲があった頃には、このようにして巨大ブラックホールができたと考えられます。しかしこのシナリオでは、現在の宇宙にある巨大ブラックホール全てを作り出すことができません。大昔にあった雲だけでは数が足りないのです。
重い元素が豊富な雲
東北大学の研究者は、宇宙が始まったばかりとは言えない、もっと後の時代での、巨大ブラックホールの出来方を調べ始めました。時間とともに、宇宙にあるガスには、水素とヘリウムだけでなく、酸素や炭素といった重い元素がどんどん混ざってきます。そうなると、雲の性質が変わってきます。とてつもなく重い星が生まれなくなる代わりに、雲は小さなかたまりに分かれるのです。小さなかたまりからは小さな星々が生まれますが、これらの星からは直接は巨大ブラックホールができません。
重い元素が豊富な雲からも巨大ブラックホールができるのではないか、と研究者は考えました。その答えを見つけるために、新しくとてもパワフルなスーパーコンピュータを使って計算してみました。その結果、雲の中で起こっていることを初めて明らかにしました。
新しい理論
おどろいたことに、重い元素が豊富な雲からも、とてつもなく重い星ができることがわかりました。最初は雲が分かれて、小さな星々ができます。しかし、星々が雲の中心に向かって流れてゆき、そこで大きな星々とぶつかり合体します。たくさんの小さな星と合体した星が成長し、最後には巨大ブラックホールになるのです。
この新しい発見から、巨大ブラックホールは、水素とヘリウムだけの雲からできるだけでなく、重い元素が混ざった雲からもできることがわかりました。これで、現在の宇宙になぜ、中心に超巨大ブラックホールを持つ銀河がたくさんあるのか、説明できます。
画像提供:国立天文台
知っ得ダネ
超巨大ブラックホールの重さは、一番重いもので私たちの太陽の100億倍になります!
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