地球のような惑星(わくせい)には大気がありますが、なんと恒星(こうせい)にも大気はあるんです!恒星の大気をもっとよくわかるために、天文学者たちは太陽の10倍以上重い恒星=超巨星の大気を今までにないくらいくわしくしらべました。地球の大気にはいくつかの層(そう)がかさなっていて、それぞれの層にはとくちょうがあります。私たちは一番下の対流圏(たいりゅうけん)に住んでいます。ここでは天気のほとんどの現象がおこり、ほとんどの雲はここに発生します。そこから上に向かって高くのぼっていくほど空気は少なくなり、地球の大気は少しずつ宇宙に消えていきます。
近くの超巨星
地球の大気についてはよくわかっていますが、恒星の大気についてはまだなぞがたくさんのこっています。それらをもっとよく知るために、天文学者の国際チームがさそり座のアンタレス(この写真がそうです)をしらべました。今までにこれほどくわしく恒星の大気をしらべたのは、太陽の大気のほかにはこれがはじめてです。
天文学者たちがしらべたアンタレスは赤色超巨星で、このタイプの恒星の中では地球に一番近いものです。赤色超巨星は宇宙の中でもっとも大きく、他の恒星にくらべて温度が低いです。これらの恒星は寿命の終わりに近づいていて、ゆくゆくは超新星になります。
くわしい観測
この恒星の表面に一番近い層は、光球(こうきゅう)とよばれています。ここでは恒星のエネルギーが光として放出(ほうしゅつ)されます。その次の層は彩層(さいそう)です。この層は、恒星の表面のあわだつガスが作る磁場(じば)や衝撃波(しょうげきは)であたためられています。このようにして恒星の熱が、外側の層につたわって宇宙に放出されるのです。
人の目で見える可視光線(かしこうせん)で見た時、アンタレスは太陽系の中で火星の軌道(きどう)をこえるほどの大きさですが、電波をつかって調べるとさらに大きいことがわかりました。超巨星の大気の層は、今まで考えていたよりも12倍も大きいことがわかりました。また大気の温度も予想より低いことが明らかになりました。図からも読みとれるように、他の恒星にくらべるとかなり「なまぬるい」くらいの温度のようです。この発見も、いろいろな望遠鏡の協力のおかげです。
写真提供:アルマ望遠鏡(ヨーロッパ南天天文台、日本の国立天文台、アメリカ国立電波天文台)のE.O’gorman:AUI、アメリカ国立電波天文台、アメリカ国立科学財団、のS.Dagnello
図の説明:アンタレスの大気の広がりと、太陽系の惑星の位置を比べたもの。アンタレスの中心に太陽があった場合、地球と火星は、光球の内部にあることになります。木星が上部彩層と下部彩層のさかいめ、土星がその外の層にあることになり、アンタレスの大気は、土星より外まで広がっていることになります。
国立天文台アルマ望遠鏡による日本語サイトあり
https://alma-telescope.jp/news/antares-202006
知っ得ダネ
アンタレスは、夜空で肉眼で見える恒星の中で最も大きく明るいものの1つです。けれどもアンタレスのそばには、肉眼では見えない小さなお供の恒星がいます。アンタレスは二つの恒星がおたがいのまわりを回っている連星(れんせい)です。
この記事はアメリカ国立電波天文台の報道発表によります。
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